十勝平野蒸溜所は、北海道中川郡幕別町に位置する、クラフトジンの本格的な製造拠点です。十勝の豊かな自然の恵みとユニークな素材を活かした、個性的なジン造りを目指している蒸溜所として注目を集めています。
特徴とコンセプト
- 十勝唯一のクラフトジン蒸溜所: 十勝地方では珍しいクラフトジンに特化した蒸溜所であり、地域の特色を活かしたジン造りを行っています。
- 十勝のボタニカルを活かす: 十勝平野蒸溜所の大きな特徴は、十勝産の農林水産物を「ボタニカル」（ジンに香りや風味をつける植物素材）として積極的に活用している点です。公式サイトや報道によると、十勝産の小豆、マッシュルーム、ラズベリーなど、ユニークな素材を24種類も使用したジン「明時（AKATOKI）」を製造しています。季節限定品として、旬のボタニカルを使ったジンも計画しているようです。
- 「明時（AKATOKI）」への思い: メインブランドの「明時（AKATOKI）」は、夜半から明け方までの時刻を表す言葉で、「夜明け」の願いが込められています。十勝の原野を切り拓いた先人たちへの思いも込められているとのことです。
- 元食品製造工場を利活用: 蒸溜所は、幕別町の十勝ヒルズ内にある元食品製造工場を利用して開設されました。
- クラウドファンディングでの注目: ファーストバッチにあたるクラフトジン「明時（AKATOKI）-LIMITED EDITION-」は、クラウドファンディングサイト「Makuake（マクアケ）」で先行販売され、初日で目標達成、最終的には800%を超える支援を集めるなど、高い注目度を示しました。
製造されるお酒の種類
十勝平野蒸溜所が主に製造しているのはクラフトジンです。
- 「明時（AKATOKI）」:
- LIMITED EDITION: 十勝産の小豆、マッシュルーム、ラズベリーなど24種のボタニカルを使用した第一弾の限定レシピです。フローラルでオリエンタルな香りと複雑で奥深い味わいが特徴とされています。
- TANZANITE（タンザナイト）: 深いブルーが特徴のジンで、バタフライピー（蝶豆）の花由来の天然色です。広島県産ベルガモットの皮を使用しており、上品で華やかなシトラスの香りが楽しめます。炭酸やトニックウォーターで割ると、色が紫やピンクに変化するというユニークな特徴もあります。
- RASPBERRY（ラズベリー）: 帯広市岩内町の「ときいろファーム」のラズベリーをベースに、二度漬けすることで果実の風味を凝縮した淡いピンク色のジンです。優雅で甘やかな香りが特徴です。
所在地
十勝平野蒸溜所の所在地は、**北海道中川郡幕別町字日新13-65（十勝ヒルズ内）**です。
開設時期と現状
2023年にクラフトジンの本格製造拠点として開設されました。酒造免許が下りてから仕込み作業に入り、順調に進めば2024年の春ごろから商品販売を開始しているようです。
見学について
現時点では、公式ウェブサイトや一般的な情報源から、**一般向けの見学ツアーが常時開催されているという明確な情報は見つかりませんでした。**ただし、一部報道では、2025年5月に一般向けの製法説明会が開催されたとの情報もあります。
もし見学を希望される場合は、訪問前に公式サイトを確認するか、直接問い合わせてみることをお勧めします。
十勝平野蒸溜所は、十勝の地域性を活かしたクラフトジンで、日本の蒸溜酒業界に新たな風を吹き込む存在として期待されています。
クラフトジンについて
1. クラフトジンとは何ですか？
「クラフトジン」という言葉に厳密な法的定義があるわけではありませんが、一般的には以下のような特徴を持つジンを指します。
- 小規模な蒸溜所で生産されている: 大手メーカーによる大量生産ではなく、比較的小規模な蒸溜所が、手作業や伝統的な製法にこだわって製造しています。
- 個性的なボタニカルを使用: ジンの主要な香り成分であるジュニパーベリー（杜松の実）に加え、生産地の特性や生産者のこだわりを反映した、様々な個性的な植物（ボタニカル）を使用しています。これにより、画一的ではない、多様な風味のジンが生まれます。
- 生産者のこだわりが感じられる: 原料の選定、蒸溜方法、ボタニカルの配合、熟成方法など、各工程において生産者の強いこだわりや哲学が反映されています。
- 少量生産: 大量生産ではないため、一つ一つのボトルに職人の技や情熱が込められています。
簡単に言えば、**「作り手の顔が見える、個性とこだわりが詰まったジン」**と言えるでしょう。
2. なぜ今、クラフトジンがブームになっているのですか？
クラフトジンが世界的に注目されるようになった背景には、いくつかの要因があります。
- 多様な風味の追求: 近年の食文化の多様化と、消費者の「本物志向」「個性志向」の高まりが背景にあります。画一的な味ではなく、その土地ならではの風味や、生産者のこだわりが詰まった製品が求められるようになりました。
- ボタニカルの多様性: 他の蒸溜酒（ウイスキーやブランデーなど）に比べて、ボタニカルによって香りのバリエーションを無限に生み出せるというジンの特性が、クラフトマンシップを刺激しました。
- カクテル文化の発展: クラフトジンは、ジントニックやマティーニといった定番カクテルだけでなく、新しいカクテルの創造にも貢献し、バー文化を活性化させています。
- 地域活性化への貢献: 地元の農産物や特産品をボタニカルとして活用することで、地域の産業や観光にも寄与しています。
- 小規模蒸溜所の参入障壁の低さ: ウイスキーのように長期の熟成期間が必要なく、比較的短期間で製品化できるため、小規模な蒸溜所が参入しやすいという側面もあります。
3. 一般的なジンとの違いは何ですか？
基本的な製法は同じですが、クラフトジンと一般的なジン（例えば、大手メーカーのスタンダードなジン）には、以下のような違いがあります。
| 項目 | 一般的なジン（マスマーケット向け） | クラフトジン |
| 生産規模 | 大規模な工場で大量生産 | 小規模な蒸溜所で少量生産、手作業の比重が高い |
| ボタニカル | 主にジュニパーベリーと数種類の定番ボタニカルを使用。風味が比較的均一。 | ジュニパーベリーに加え、多種多様な個性的なボタニカル（地元産、珍しいものなど）を積極的に使用。香りのバリエーションが豊富。 |
| 製法 | 効率を重視した製法が中心。 | 伝統的な製法や、蒸溜所の独自技術、職人のこだわりが強く反映される。 |
| 個性 | 安定した品質と、誰にでも親しまれる標準的な風味を目指す。 | 生産地の特徴、作り手の哲学、ユニークなボタニカルによる強い個性を持つ。 |
| 価格帯 | 比較的リーズナブル。 | 原料や製法に手間がかかるため、比較的高価なものが多い。 |
4. クラフトジンの製造プロセスはどのようなものですか？
クラフトジンの製造は、主に以下のステップで進められます。
- ベーススピリッツの製造: まず、大麦、ライ麦、小麦、トウモロコシなどの穀物を原料とした中性スピリッツ（蒸溜してほぼアルコールと水だけにした高純度のアルコール）を準備します。これを自社で製造する場合と、外部から購入する場合があります。
- ボタニカルの選定と準備: ジンの個性を決定づける重要なステップです。ジュニパーベリーは必須ですが、それ以外にも柑橘類の皮（オレンジ、レモン）、コリアンダーシード、アンゼリカの根、リコリスの根、シナモン、カルダモン、ナツメグ、そして各蒸溜所の独自性を示す地域特有のボタニカルなどが選ばれます。これらを乾燥させたり、細かく砕いたりして準備します。
- ボタニカルの浸漬（浸漬法）または蒸気蒸溜（ヴェイパーインフュージョン）:
- 浸漬法（Steeping / Maceration）: ベーススピリッツにボタニカルを直接浸し、数時間から数日間漬け込みます。ボタニカルの風味成分がアルコールに溶け出します。
- 蒸気蒸溜（Vapor Infusion）: 蒸溜器のバスケットなどにボタニカルを入れ、アルコールの蒸気がその中を通過する際に、ボタニカルの香りを吸収させます。より繊細な香りを抽出できるとされています。
- 多くのクラフトジンでは、これらの方法を組み合わせたり、特定のボタニカルごとに方法を使い分けたりしています。
- 再蒸溜: ボタニカルの風味を吸い込んだスピリッツを、再度蒸溜します。これにより、アルコール度数を高め、風味を凝縮させるとともに、不要な成分を取り除き、クリーンな酒質にします。蒸溜器の種類（ポットスチル、コラムスチルなど）や蒸溜方法も、ジンの風味に影響を与えます。
- 加水と熟成（オプション）: 蒸溜されたジンはアルコール度数が非常に高いため、飲用に適したアルコール度数（通常40%～50%程度）まで水を加えて調整します。その後、タンクで数週間休ませたり、樽で短期間熟成させたりすることもありますが、多くのジンは熟成させずに瓶詰めされます。
- 瓶詰め: 最終的な品質チェックを経て、ボトルに詰められ、出荷されます。
5. クラフトジンのボタニカルとは何ですか？
ボタニカルは、ジンの風味と香りを決定づける植物性原料のことです。ジュニパーベリーはジンに必須のボタニカルであり、その松のような香りと苦味がジンの特徴を形作ります。しかし、クラフトジンにおいては、ジュニパーベリー以外のボタニカルが、そのジンの個性を際立たせる鍵となります。
一般的なボタニカルには、以下のようなものがあります。
- 柑橘類: レモンピール、オレンジピール、グレープフルーツピールなど（爽やかさ、フレッシュ感）
- スパイス: コリアンダーシード、アンゼリカの根、リコリスの根、カルダモン、シナモン、ナツメグ、クローブなど（スパイシーさ、土っぽさ、甘み）
- ハーブ: ローズマリー、タイム、ミント、ラベンダーなど（清涼感、フローラルさ）
- その他: アーモンド、カシアバーク、イリスの根など（ナッティさ、香りの定着）
クラフトジンでは、これらに加えて、地域特有のボタニカルが積極的に使われます。例えば、日本のクラフトジンであれば、以下のようなものがよく使われます。
- 和柑橘: 柚子、かぼす、すだち、日向夏など
- お茶: 玉露、煎茶、ほうじ茶など
- 山椒: 和山椒、ぶどう山椒など
- 桜: 桜の葉、桜の花
- その他: 笹、米、椎茸、シソ、羅臼昆布など
これらのボタニカルの組み合わせや配合、抽出方法によって、無限ともいえる香りのバリエーションが生まれます。
6. 日本のクラフトジンの特徴は何ですか？
日本でも近年、クラフトジン蒸溜所が急速に増え、世界的に高い評価を受けています。日本のクラフトジンの特徴は以下の通りです。
- 和のボタニカルの活用: 柚子、山椒、緑茶、桜、シソ、ヒノキ、笹など、日本ならではのユニークな和のボタニカルを積極的に取り入れています。これにより、繊細で奥深い、日本独自の風味を持つジンが生まれています。
- 繊細な酒質: 日本酒や焼酎造りで培われた、水へのこだわりや蒸溜技術が、ジンの繊細でクリーンな酒質に反映されています。
- 地域性との結びつき: 各地の蒸溜所が、その土地の気候風土や特産物を活かしたジンを造っており、地域ごとの個性が際立っています。
- 「GIN-KAZU」というユニークなカテゴリー: 日本では、焼酎の製造技術を活かし、米焼酎をベーススピリッツに使用したり、焼酎と同じ単式蒸留器でボタニカルを蒸留したりするジンも登場しており、「GIN-KAZU」（ジンと焼酎の造語）と呼ばれることもあります。
7. クラフトジンはどのように楽しむのがおすすめですか？
クラフトジンは、その多様な風味ゆえに様々な楽しみ方があります。
- ジントニック: 最も定番の飲み方です。シンプルな分、ジンの個性が際立ちます。ジンとトニックウォーターの比率は1:3～1:4程度が一般的ですが、ジンの特徴に合わせて調整しましょう。ガーニッシュ（飾り付け）も重要で、ジンのボタニカルに含まれる柑橘類やハーブを使うと、香りが一層引き立ちます。
- ソーダ割り: トニックウォーターの甘さが苦手な方には、ソーダ割りがおすすめです。ジンの香りや味わいをよりストレートに感じられます。
- ロック/ストレート: 香り豊かなクラフトジンは、ぜひロックやストレートで飲んでみてください。ジンの複雑な香りの層や、口に含んだときの味わいの変化をじっくりと楽しめます。
- カクテル: マティーニ、ジン・フィズ、ネグローニなど、様々なカクテルに活用できます。クラフトジンの個性を活かしたオリジナルカクテルを試すのも楽しいでしょう。
- お湯割り: 冬場など、体を温めたい時には、お湯割りも意外とおすすめです。ボタニカルの香りがふわっと立ち上り、リラックス効果も期待できます。
グラスの選び方、氷の質、トニックウォーターやソーダの種類にもこだわることで、さらに奥深いクラフトジンの世界を楽しめます。ぜひお気に入りの一本を見つけて、様々な方法で試してみてください。
